キラの1歳の誕生日。私が生まれて初めて手に入れたものがあった。
「月君、何をしてるんですか?」
先にベッドに入った月が大きな本を膝に、柔らかく笑っていた。
「ん?エルがね、小さい頃のキラの写真を見たいんだって。だから、昔の写真を引っ張り出していたところだよ」
シーツの上に置かれた別のアルバムを指先で摘んで捲った。
「これはキラが歩き始めた頃のですね。上手く歩けないと泣いてしまって大変でした。きっと悔しかったのでしょうね」
「誰かに似て負けず嫌いだからね。あ、これ覚えてる?キラはお前で遊ぶのが好きだったから」
月が私に見せたのは、歩く私の足にしがみ付いて笑うキラ。幼い頃、キラはこうして運ばれるのが好きだった。わざと歩調を乱して歩いたり、走ったりすると大きな声で笑った。
「キラは月君似ですからね、仕方がありません」
キラに似た茶色の髪に触れた。洗われた髪は指に心地よい。
「お前にもだろ」
笑いを含んだ反論がすぐさま返された。けれど、ふと、その笑いが消えた。月の手元には別の写真があった。キラが1歳になった時のもの。
「…L、写真を撮る事を許してくれてありがとう」
「私が撮りたかったんです」
「でも、僕らの為に信念を曲げてくれた」
「月君は子供がハウスに入所する際、何が行われるかご存知ですか?」
「…知らない」
写真から視線を上げ、少し首を傾げて私を見る月。突然の会話の変化を訝しんでいた。
「ハウスへの入所は、全く別の人生を与えられると言う事です。その代償にそれまでの人生は葬られます。成長した子供の出来具合によっては、文字通り、墓を用意された者もいる。そして、子供の持っていた僅かな財産、着ていた服、家族の写真、それに名前。全てが剥ぎ取られました」
「L…」
「あいにく私は着ていた服以外何も持っていなかった。成長し探偵として名を上げた後も、私個人が所有するものを何も持ちませんでした。月君、貴方と逢うまでは」
キラを抱いて笑う月。その隣で月の腰を抱いた私が並んで写っている。写真の月の頬を撫でた。
「これは私の人生が変化した象徴です」
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