ミルクパズルのしづか様より、素敵な小説をいただきました
記念すべき初のL月の小説を、
私のリクエストで書いて頂き、とても嬉しいです!!
素敵で楽しい小説を書いていただき、本当にありがとうございました♪



ミサの長い長い一日
 
 
ミサはライトのためなら何だって出来る。
見返りなんていらない。だから月、ミサを見て。ミサだけを見て。
ねぇ、ライト……。
 
愛しい男とその友人・竜崎との間に繋がれたものにミサはドン引きせずには
いられなかった。
手錠。おそらく装着したままの生活を予定してだろう、鎖の長い。真新しいビルの
ホテルに似せた一室で、ミサは固まっていた。
「キモイよ……竜崎さんってそっち系?」
頬に手を寄せてしなを作る。ようやく発した言葉に、竜崎は何を考えてるか
分からない無表情で
「私だって好きでしているわけではありません」
「嘘よ!」
ミサは断言した。「いくらライトがカッコいいからって、ミサ認めないんだから!
ホモなんて! いや竜崎がホモでも良いけど、ライトを狙わないで!」
「……誤解です。月くんの疑いは晴れたわけではないので、監視させて
いただくだけです」
「ミサ。しょうがないんだ。僕だって不本意だけど、こうして解放されただけでも
奇跡みたいなものなんだ」
ライトが言う。「特にミサは物証も出たし……」
「だからぁ、なにかの間違いだよライト」
「……」
「ミサさんが何と言っても手錠は外しません」
じゃらり、手錠を見せつけるようにする。このままじゃライトの貞操が危ない……
ミサはごくりと息を呑むと、月達を見上げた。
「じゃあミサは竜崎さんを監視する」
「お好きにどうぞ」
この男は表情一つ変えない。こういうところ、ライトに似てる……ううん、
ありえない! ライトは優しくて格好良い、ミサの王子様だもの!
「ところで月くん。この靴下を履いて見てもらえますか」
竜崎はズボンのポケットからくしゃっとなった白い靴下を取り出した。
汚い物でも持つかのようにつまみあげる。
「? 別に構わないが……」
ピピーッ!
ミサの中で警笛が鳴り響く。
「ちょっと竜崎さん、まさか白靴下フェチってことないよね?」
「ミサさんは黙っていてもらえますか」
ライトはボーダー柄の靴下を脱いで白靴下を履いた。その時。
「うっ……!?」
「どうしたのライト!」
ライトが身体を二つに折って苦しみだした。まさか靴下に何か……!?
「ライト! 大丈夫!?」
「胸が……」
それは急速に起きた変化だった。
ライトの胸がふくらみ、うなじが細くなり、のど仏が消えて、細いウエストが
さらに細くなり、心なしか腰回りが丸くなり、顎が優しいラインに変わり------
数分後、そこにうずくまっていたのは、紛れもない女の子だった。
竜崎は親指を口元に当て、腰をかがめ、にんまあと笑う。
「呪いの女体化靴下です」
「何が何だか分からないけど、バカ------!」
ミサは竜崎を思いっきりビンタしようとし------たが、見事にかわされた。
本当にむかつく男である。
 
 
「竜崎。これは一体どういうことなんだ」
ミサの絶叫を聞きつけて、捜査本部の面々が集まった。女の子になったライトに
まず驚き、パニックを起こしてわめいているミサをなだめ、のほほんとしている
(おそらく事態の元凶の)竜崎に詰め寄った。総一郎など息子を娘にされて
蒼白になっている。
「一緒に暮らすなら男より女が良い。自然な感情だとは思いませんか?」
竜崎はいけしゃあしゃあと言ってのけた。
「だから僕を女にしたのか……」
ライトは明らかに怒っていた。当然である。手のひらの上には白靴下。
脱いでも男には戻らなかったのだ。
ライトは額に手をやるとシニカルに笑った。
「竜崎。お前のやることは常軌を逸している。良いから元に戻せ。
今なら許してやる」
美少年から美少女になったライトの声は澄んでいて、男っぽいしゃべり方でも
不思議と下品さが無く、むしろ格好良かった。
「さすがライト、心が広いのね。ミサうっとりしちゃう」
「良いですよ。ただし条件があります」
「……交換条件か。なんだ? 捜査協力なら惜しまないが」
「いえ。月くんには私の子供を産んでもらいます」
「……」
周囲がしんと静まりかえった。
竜崎は「……は?」という顔のまま固まっているライトの手を取る。
「二人の子ならLを超えるかも知れません。私は優秀な子孫を残せる
女性を捜していました。そして月くん、あなたに白羽の矢が立った
ということです」
「……僕は男だ」
「はい残念、今は女です」
「僕は男だ!」
「今は女です!」
バキッ。ライトの右ストレートが竜崎の頬に、竜崎のキックがライトの
頬にヒットした。ミサは安全地帯に移動する。
「竜崎さん、男と女だったら良いってもんじゃないよ……すでに犯罪だよ」
松田がうんうんと頷いた。ミサはその場に崩れ落ちる。女体化靴下? 
ライトが女の子になっちゃった? そして……竜崎の子を産まないと
男に戻れない???
「ダメー! ライトの子を産むのはミサなんだからぁぁぁ!!」
「さあ月くん、ベッドに行きましょう」
ライトはがっと竜崎の肩をつかんだ。
「竜崎。お前は僕の友達だ」
「はい。月くんは私の初めての友達です」
「友達同士は普通、セックスはしないんだ」
ライトは至極当然のことを言った。しかし竜崎は「大丈夫です。私は
細かいことは気にしません」とライトの手を引こうとする。ミサは二人の間に割って
入った。手を広げて竜崎の前に立ちふさがる。何ですか、と面倒そうに見る
彼をきっとにらみ据えた。
「竜崎さんがそういうつもりなら、ミサ、二人を見張る」
「えっでもミサミサ、仕事が」
「マッツー。これは女の戦いなの。口出ししないで。仕事ならしばらく延期だって
事務所には言っておいて?」
竜崎は目を細める。なっ何よ、負けないんだから!
ライトは……ライトはミサが守る!
「ミサさん」
「なによ」
「ゲームをしませんか」
竜崎は人差し指を突き出し、にまあと笑う。
「ルールは簡単です。私が月くんと寝たら私の勝ち、月くんがミサさんと
寝たらミサさんの勝ち。賞品は、なんでも一つ言うことを聞く」
「おい竜崎、何を勝手に」
「……いいわよ。言っとくけど、頭の良さでは敵わなくても恋愛スキルでは
ミサの勝ちみたいだから。後で吠えづらかかないでね」
「ミサ」
「ライトは黙ってて。これは男と女の戦いよ!」
「では……ゲーム・スタート」
竜崎はじゃらりと手錠を見せつけると、奥の部屋に向かって歩き出した。
ライトがつられて、ミサもその後を追った。
あとには呆然と立ちつくす捜査本部の面々だけが残された。
 
 
ミサはうっとりとライトの横顔を見上げた。もしライトが女の子だったら
こんなに素敵な子だったのか。これならアイドルでも十分通用する。ミサと
ユニットを組んで、武道館をいっぱいにすることだって可能かも知れない。
「ミサ」
「なぁに? ライト」
ミサは可愛らしく小首を傾げた。ライトは困ったように
「あまり見ないでくれ。気が散る」
「きゃっ。ごめんなさい」
ライトは休んでいた(というか、監禁されていた)期間のレポートを
仕上げている最中だ。手錠に繋がれ、仕事をしているらしい竜崎は
パソコンの前に陣取っている。
「小窪助教授のレポートなら、途中からカレーの作り方書いておくと良いですよ」
「……竜崎。僕は真面目にやってるんだ。助教授が手を抜いているからと言って、
僕まで手を抜くつもりは毛頭無い。これが僕のポリシーだ」
「おや。真面目ですねぇ、月くんは」
竜崎はくるりとパイプ椅子を回すと、椅子から降り、レポートを覗き込む。
「学生は面倒なことが多いですね」
「ははっ。竜崎も同じ大学生だろ?」
「1ヶ月ほどしか行ってませんけどね。キラを探すのに忙しくて」
「……僕も協力するよ。あんな目に遭ったんだ、僕もキラを追う理由がある」
「はい。出来れば子供も産んでください」
「竜崎」
ライトは腕を組んで竜崎を睨みあげた。美形は怒ると迫力がある。
ミサならびびってしまうような表情でも、竜崎は平然としている。
「却下だ。僕がお前の子を産むなんて、金輪際あり得ない」
「そうよそうよ、ライトの子はミサが産むんだから!」
「……ミサ。ちょっと黙っていてくれないか」
「……はぁい」
「月くん」
竜崎はライトの顔をまじまじと見た。ちょっ、顔近いっつーの!
まん丸な、真っ黒い目がライトを覗き込む。
「怒った月くんも可愛いです」
はあ?
ライトははぁ〜〜〜っとため息をつくと、机に肘を突いた。
「竜崎。僕をまだ疑ってるのか?」
「私が月くんを疑ってるから女性にしたと? 誰がそんな理屈の通らないことを
するんですか。私はただ、己の欲望に忠実なだけです」
おい。
「それが問題だっての!」
「ミサ。……良いか竜崎。お前の気持ちは分かった。しかし僕にも断る権利がある。
僕は男と寝るのはごめんだし、子供を産むのはもっとごめんだ」
「そっ……そうよ、こんなことおかしいんだから!」
「分かりました」
あっさりと竜崎は言った。意外なことに。ミサは口元に手をやり、
ライトに至っては目を見開いて竜崎を凝視した。
「ではミサさんを抱いてみせてください」
ライトは頬をひくつかせた。手錠を上に上げる。
「お前のいる、ここでか?」
「えっ……それはちょっと嫌かも」
ライトと寝……じゃないじゃない、結ばれるのは嬉しいけれど、竜崎の
目の前でなんて嫌すぎる。いや、別に竜崎じゃなくたって嫌だ。ミサには
そんな変態趣味はない。至ってノーマルだ。
「そうですか。このままでは、勝負はつきそうにありませんね」
「……何が言いたいの」
「こういうことですよ」
竜崎はライトのうなじにキスした。びっくりして離れる月の手を引き
赤い舌をうなじに這わせる。そのようすが薫るようにいやらしくて、
思わずミサはごくりと唾を飲んだ。
「……ちょ、ちょっと待て竜崎。何を……っ」
「実力行使です」
「ふざけるな!」
「ふざけてはいません。私は真剣です。本気で月くんに子供を産んで欲し……」
バキッ。竜崎の頬に右ストレートが炸裂した。当然である。
「次はミサの番ね……」
「おいミサ」
「大丈夫、ライト。すぐ済むから」
ふらりと立ち上がり、ミサはライトの頬を手で挟むと、唇にキスを落とした。
ふふっ、と笑う。
「二度目だね。ライト」
「……ああ」
こんなときもライトは冷静だ。額に脂汗が浮いてるようにも見えるが
きっと気のせいである。
「ねぇライト。ミサね。ライトのことが好き……ライトのことを、
もっと知りたいの。ダメ?」
ライトは少し考える仕草を見せたが、目を竜崎の方に逸らすと
「竜崎」
「ダメです。手錠は外せません」
「竜崎のケチ!」
「なんと言われようともダメなものはダメです。ミサさんはそもそも女同士の
やり方知ってるんですか」
ぐっと詰まる。そんな知識はもちろんない。
「私が実地で教えて差し上げましょう。もちろん月くんを土台に」
「お前それが言いたかっただけだろ!」
「ご名答」
「……とにかく、人を盾にしたくだらない勝負はやめてくれ。元に戻せ」
「目の保養です」
「も・と・に・も・ど・せ」
「ダメです。これは私とミサさんの勝負です。月くんは黙っていてください」
「ミサ」
「ライト……ゴメンね。でもミサ、絶対勝つから! だいじょうぶ!」
「『大丈夫』じゃないだろ……」
机に肘をついてため息をつく。ライトの困った顔。ミサ、ライトを困らせた
……? 胸がきりりと痛む。いやだ。ライトに嫌われちゃう。そんなのやだ。
ミサはばっと上着を脱いだ。半分見えていたデコルテが露わになる。黒い
キャミソールに美しい白い肌が映えて艶めかしい。
「ライト。……しよ?」
「は?」
「は、じゃなくて。だってこの人絶対、勝負に勝たなかったらライトの女体化?
解かないよ。そういう人っぽいもん」
「ミサさんは意外と賢いですね」
「そうだよ。ミサは世間ではおバカだと思われてるけど違うんだから。ライトの
役にも立つし」
ごくりと息を呑む。ミサは色っぽい格好はするが、決して男性経験は多くない。
いつも相手から誘われるから、こんな大胆に男を誘うのは初めての経験だった。
だが仕方がない。ライトの男としての人生、そしてミサの女としての
人生がかかっている。恥ずかしがっている場合ではないのだ。
しかしライトは真っ直ぐな目でミサを見ると、首を横に振った。ミサの
泣きそうな顔に優しく微笑むと
「ミサが嫌いな訳じゃないが……僕もお前の前でなんてご免だ」
「余裕ですね。一生女のままかも知れないのに?」
「お前は『ゲームに勝ったらなんでも言うことを一つ聞く』と言った。
ミサが呪いを解くのに使うことは明らかだ。つまり、方法はある」
「その通りです」
「だったら、それを見つけるまでさ」
ライトはにやりと笑う。竜崎もにまりと笑った。こんなとき、ミサは疎外感を
覚える。
まるで彼らが、二人だけにしか分からないゲームをしているみたいで。
この世で一番、ライトのことを分かっていたいのはミサなのに。
……竜崎は、ずるい。
 
 
 
人数分のカレールウを折り、大きなお屋敷の執事然としたワタリに手渡す。
ワタリは大きな鍋をかき回している。
台所で、ミサは夕飯の手伝いをしていた。ライトは「靴下のことについて
調べたい」とミサを部屋から追い出してしまった。ミサとしては若干
不安である。竜崎が実力行使に出たら、女の力ではひとたまりもない。
まあ、まさかそこまではしないと思うが……。
「あのね、ワタリさん」
ミサは可愛らしく小首を傾げた。
「竜崎は甘い物ばかり食べてるけど、カレーなんて食べられるの?」
「あとで別の鍋に移し砂糖を足しますので」
「あはっ、やっぱりそうなんだ。子供用のカレーだね」
ワタリの目元が少し和らぐ。えっ今の笑った? 分かりづらいけれど笑った?
「ミサ」
「あっライト、調べ物終わった?」
「ああ。呪いの女体化靴下について分かった」
台所にライトと竜崎が入ってくる。
「月くんの情報収集能力は凄いです」
竜崎は気に食わなさそうにがじがじと親指を噛んだ。
「分からないように情報を分散させて、それぞれ8階層に隠していたのに
見つけられてしまいました」
「結論から言うと。……女体化靴下を履くと女になるが、1日で解けるらしい」
ミサははぁぁぁ〜っと息を吐いた。腰を台所にとんと打ち付けて
「なんだぁ。それじゃ、このまま待っとけば良いんじゃん」
「そうもいかない。もしその間男と寝ると、女のまま固定してしまうそうだ」
と、いうことは。
「竜崎!」
「はい」
「なんて勝負を持ちかけるのよ! 危うくライトが本当に女になっちゃう
とこだったじゃない!」
「このままでも十分可愛らしいし、良いと思うのですが」
いけしゃあしゃあとこの男は言う。ミサはぎゅっとエプロンの端を
握った。言わなきゃ分からない? そう。
「確かに女になったライトは美人だよ? ミサでも敵わないくらい。
けれどライトは男だもん……生まれてからずっと。それを当人の意志無く
変えるなんて、酷いことだよ」
「ミサの言う通りだ竜崎。今回の件では貸しを作ったからな」
「……分かりました。それでは、ミサさんにはこれを」
左のポケットから黒い靴下を取り出す。ま、まさか。
「呪いの男体化靴下です」
「人の話を聞け------!」
ミサは靴下を奪い取ると、即刻、はさみで切り刻み、ゴミ箱に
捨てた。もったいないですね、と竜崎はひょっこりゴミ箱を覗き込む。
「竜崎」
ライトはにっこり笑って竜崎の肩に手を置いた。手には白い靴下。
「お前も履け」
「白靴下を? 嫌です、私は靴下なんて履きません」
「嫌がるポイントはそこかよ! 良いから履け、お前も女の体になれ!」
「まっぴらご免です!」
「だったら人を騙して女体化なんてさせるな! こら! 待て!」
台所をぐるぐる回る。ワタリはのんきな口調で
「竜崎は靴下がお嫌いでございますから」
言って火を止め、ルウを割り入れる。この人はとことんマイペースだ。
やっぱり竜崎の側近だけはある。
「そういう問題じゃないよ、ワタリさん……」
ライトが竜崎を押し倒す。竜崎は足で靴下をつまんで引っ張り、
遠くに放り投げる。ぽちゃん。鍋の中に靴下がIN。
あちゃあ、とミサは顔を手で覆った。
「……竜崎」
竜崎は慌てた様子で
「す、すまん。ワタリ」
「すみません。そんなつもりじゃ……」
ワタリは眉一つ動かさずに
「お二人ともカレーがお好きですな。ミサさん、鍋を出してください。
半分は竜崎の分ですから」
責任を持って二人で食えという意味だろう。
「は、はい……」
「待ってくれワタリ。月くんの靴下が入ったカレーを私に食えと?」
「……食べ物を粗末にするおつもりで?」
優しい、けれど断固とした口調。穏やかな人が優しく怒るとなんだか不気味だ。
竜崎とライトは顔を見合わせた。二人して目線で会話する。
とうとう覚悟を決めたのか、竜崎はぐっと拳を握ると
「……分かった」
「ようございました」
「天罰だな、竜崎」
「月くんはうるさいです」
「ははっ。まあ半分食べてやるから」
ワタリは平然としている。戸棚を探ると
「ミサさん、カレールウがありません。食料庫から出してきてください」
「はぁい!」
やはりとことんマイペースだ、とミサは思った。
それが竜崎と長く一緒にいられる秘訣なのかも知れない。
 
 
「ミサ」
ライトの少し高い優しい声がミサの耳元をくすぐる。ミサは寝返りを打つと
とんでもない光景が目に飛び込んできた!
「キャー! この変態! ライトから離れて!」
真夜中。「女の子になったライトと竜崎を一緒に寝させるなんてとんでもない」と
一緒のベッドに潜った(竜崎は下に敷いた布団)ミサだったが、いつのまにか
ぐっすり眠っていたようだ。ライトの困った声で目が覚めると、
竜崎が上半身裸でライトに覆い被さっていた。
ポカポカ殴られて、竜崎は迷惑そうに
「女の子に救いを求めるなんて、月くんらしくないですよ」
ライトは余裕の笑みを浮かべて竜崎を見据える。
「今の僕は『女の子』だ。助けを求めて何が悪い。そうだろ、ミサ?」
「そうよ! 竜崎さん、変態禁止! 服着てよ早く!」
薄暗がりの中で、竜崎は手錠を再び外し、渋々と白いシャツを羽織る。
ミサはそれを見ても怒りが収まらず、二人の間に割ってはいると、
「真ん中はミサがもらうから」
そう言ってベッドに潜り込んだ。ライトがミサのいた方向へ移動する。
ライトのぬくもりと匂いに体を沈めると、眠気が……おっといけない。
ミサはきっと竜崎を見据えた。
「良い? 竜崎さん。ライトはミサのものなんだから、手出し禁止ね」
「いつから月くんはミサさんの物になったんですか?」
「いつからって……生まれたときから、赤い糸で結ばれていたのよ」
「なぜ赤なんですか? 血の色か何かですか? 小指同士を赤黒い血の色で
結ばれてるなんて、穏やかじゃないですね。それに第一、ちっとも
ロマンチックじゃありません」
「ちょっと! 女の子の夢壊さないでよっ」
「頼む二人とも……寝かせてくれ」
ライトが眠そうに言う。ミサはぐっと黙る。ミサは良い子だから……
ライトの彼女だから。これ以上、こんな奴の挑発になんか乗るもんか!
ミサはきっと竜崎をにらみ据えると
「ごめんねライト。おやすみなさい」
「ああ、おやすみ……」
寝返りを打つ。ふふっ、ライトの寝顔可愛い。キスしちゃおっかな?
「月くんの寝顔は可愛いですね」
無視無視。宣誓! ミサは無視します!
ミサは布団に潜り込むと、目を閉じた。
今日は大変な一日だった。
明日になったら、ライトは男の子に戻っているだろう。そうでないと困る。
だってライトは、ミサの、やっと見つけた王子様なんだから。
 
あと、気をつけなきゃいけないことは分かった。竜崎はライバルだ!
 
 
 
終わり