(4)


…帰国後、キラを推奨するようになっていた厳格な教会に身の置き所をなくした私は、故郷の小さな村に帰った。
存続も危うい古ぼけた教会の片隅で抜け殻のように日々を過ごしていると、これまでの人生が嘘のように思える。
世の中が騒いでいる数々の事件も、どこか他人事と感じていた。

そんなある日、私を竜崎と名乗る男性が訪ねてきた。
彼はメロがハウスに置いていった、私を描いたあの絵を預かっている者だという。
来訪の前にロジャーさんから『竜崎にニアとメロについて話して欲しい。』と申し入れがあった。
ハウスでの記憶はもう朧気だったのに、彼の飄々とした簡潔な質問に引きずり出されて。
英国での生活が鮮明に蘇ってくるのだった。

竜崎の声を聴いていると応えたくなり、その瞳を見ていると問い掛けたくなる。

それは例えばメロの力になりたいと想う気持ちじゃなく…彼の前では無力になってしまいたいという抗えない感覚。

限られた時間の中で、Lともあろう男性がなぜ私を欲したのかは分からない。
けれど彼の持つ圧倒的な存在感に、私のほうはすっかり魅入られてしまった。
竜崎がLと知らされ、呼び方が変わり。
しかし彼を恋人と呼んでもいい関係なのかは聞けないまま逢瀬が続いた。
ワイミー博士も静観している。

『さあ。どうぞカノン。私に貴女の総てを解放してください。』

不思議な事だが、彼にさらけ出す痴態と行為に罪悪感を持てなかった。
それどころか、どこまでも赦されるような喜びに震えた。
身体はメロに対して淡く鋭く感じた咎めるような疼きと違い、淫靡でありながら鮮やかに軽やかに快楽を追ってゆく。

『ん。ぁふ…。』

湿度の高い温室で、私はモンステラの葉のように五体を広げ、四肢はゆっくりと蘭のように薫ってくる。
Lの長いゆびが羊歯のように私を伝い、舌が蔦のように絡まる。
私達から滴り落ちる汗…立ち上る蒸気…太古から続く永遠の環の一部になる。

細胞のひとつひとつが浮遊し、のた打ちながら再生してゆく。
私が私の核を取り戻す時間。
なんてエキゾチックで懐かしい男なんだろう。

『…ca…non…!』

互いが放たれる時かすかに私を呼ぶ声は、真珠のピアスのように耳朶に留まり慰める。


Back  Next