(3)


『シスター。僕は今日この絵を仕上げることができない。』
『えっ?』

言葉として耳に届かなかった。あまりにも切なげな顔を彼がしたから。

『僕が大人にならないとムリだった。…完璧じゃないんだ。』

私が泡立つような感覚に溺れていると、メロは握手を求めてきた。

『約束する。いつか完成させる。』

いつもならこんな時には優しくハグしてあげるのに、なぜか体が動かなくて。
メロが力強く私の手をグッと引き、抱き締めた。肩にコツンと額をのせて呟いた。






『約束のキスを。』

彼の髪がサラサラと頬に降ってきて、くちびるがそっと触れる。
私の腰に回したメロの両手が背中を撫でた後、強く組まれたのが腕の圧力と心臓の音で分かった。

『もう行って。シスター。止められそうにない。』
『ええ。放して。』

けれど言葉と裏腹に、熱く息を絡めた私たちは離れられなかった。

『カノンを汚したくない。でもメチャクチャにしたい!僕はなんで14なんだ!』
『メロ。ごめんなさい、私が悪かったの。あなたのせいではないわ。でも…』
『でもね、私もまだ大人じゃないの。どうしたらいいか分からない…ごめんね。』

何とか冷静に振る舞うよう自分に言い聞かせて、そっと彼から離れた。

私がその日の想いを懺悔できずに日本へ帰った後、メロが15になる前にハウスを出ていったと聞いた。

竜崎という、私をシスターから大人の女に変えたひとから…。


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